Next.jsとCreate React Appの違いとは?開発初期設定と生産性を徹底比較

Next.jsとCreate React Appの違いとは?開発初期設定と生産性を徹底比較

Reactで新たなプロジェクトを始めるとき、最初に直面するのが開発環境の選定です。Next.jsCreate React App(CRA)は、どちらもReactに基づいた強力なツールですが、設計思想や対応機能には大きな違いがあります。本記事では、それぞれの特徴や利点・欠点を詳しく比較し、プロジェクトの目的に応じた最適な選択肢を提示します。


📑 目次


はじめに:同じReact、異なるスタート地点

Reactは現代のフロントエンド開発において最も人気のあるライブラリの一つです。しかし、React自体は「ビュー(見た目)」に特化したライブラリであり、アプリケーション全体の構築や構成については指針を持ちません。そのため、Reactを使用してアプリケーションを構築する際には、適切な開発環境の選定が不可欠になります。

その中でも代表的な選択肢が、Create React App(CRA)Next.jsです。両者はReactをベースとしながらも、プロジェクトのスケーラビリティ、パフォーマンス、設定自由度、SEO対応など、さまざまな面で異なる方向性を持っています。

CRAは「設定不要」で素早くSPA(シングルページアプリケーション)を立ち上げたい場合に最適な選択肢です。一方、Next.jsはサーバーサイドレンダリングや静的サイト生成、APIルートなど、高度で柔軟な機能を備えたフルスタック向けフレームワークです。

この記事では、両者の機能や設計思想を比較しながら、どのようなプロジェクトにどちらが適しているのかを丁寧に解説していきます。これを読めば、あなたのReactプロジェクトに最適なスタート地点が明確になるはずです。


1. Next.jsとCRAとは何か?

まずは、Reactアプリケーション開発における2つの代表的な環境、Create React App(CRA)Next.jsが、それぞれどのような特徴を持つのかを理解しておきましょう。どちらもReactをベースとしていますが、開発者に提供する体験やスケーラビリティ、設計思想には大きな違いがあります。

1.1 CRA(Create React App)の基本概要

Create React App(CRA)は、Facebookが公式に提供しているReactプロジェクトのブートストラップツールです。複雑なWebpackやBabelの設定を気にすることなく、コマンド一つでReactアプリケーションの雛形を作成できる「ゼロコンフィギュレーション」が最大の特徴です。

以下のコマンドで、数秒のうちにReactプロジェクトが自動生成されます:

npx create-react-app my-app

作成される初期構成は次のようになります:

my-app/
├── node_modules/
├── public/
│   └── index.html
├── src/
│   ├── App.js
│   └── index.js
├── package.json
└── README.md

CRAは開発者がすぐにReactコンポーネントの実装に集中できるよう、開発サーバー、ホットリロード、ビルドスクリプトなどもすべて内包しています。しかし、サーバーサイドレンダリング(SSR)や静的サイト生成(SSG)などの高度な機能はサポートしていません

また、カスタム設定を加えたい場合はejectコマンドで内部設定をすべて展開する必要があり、それ以降は自分でWebpackやBabelの設定を管理する必要があります。これはプロジェクトが大規模になるにつれ保守性の課題となり得ます。

1.2 Next.jsの登場背景と思想

Next.jsはVercel社が開発したReactベースのフレームワークで、フロントエンドとバックエンドの機能を包括的に扱えるフルスタック向けの設計が特徴です。SSR、SSG、APIルート、画像最適化、インクリメンタルビルドなど、実運用に即した高度な機能を備えています

Next.jsでプロジェクトを作成するには、以下のようにコマンドを実行します:

npx create-next-app my-app

作成される初期構成は以下のようになっており、APIルートとページ構成が同一リポジトリ内に共存する構造が特徴です:

my-app/
├── pages/
│   ├── index.js
│   └── api/
│       └── hello.js
├── public/
├── styles/
├── next.config.js
└── package.json

Next.jsはpages/ディレクトリ内のファイル名をルーティングに自動的にマッピングするファイルベースルーティングを採用しています。これにより、ルーター設定の手間が省け、構成の一貫性が保たれやすくなります。

また、getStaticPropsgetServerSidePropsといった関数を使うことで、ビルド時やリクエスト時に柔軟なデータ取得とレンダリング制御が可能です。加えて、TypeScript、ESLint、画像最適化、サーバーレスAPIなどの機能もシームレスに統合されています。

まとめると、CRAは「最短でReactを始めたい開発者」に適した選択肢であり、Next.jsは「拡張性とパフォーマンスを重視する開発者・チーム」に最適なフレームワークと言えるでしょう。


2. 初期設定の比較:シンプルさ vs 柔軟性

開発プロジェクトの出発点は、どれだけスムーズに環境を立ち上げられるかにかかっています。Create React App(CRA)Next.jsは、どちらも簡単にスタートできる仕組みを提供していますが、その設計思想とカスタマイズの柔軟性には大きな違いがあります。このセクションでは、両者の初期設定と構成のアプローチを比較していきます。

2.1 CRAの自動化された初期構成

CRAの最大の利点は、そのシンプルで自動化されたセットアップにあります。複雑な設定や依存関係を意識せず、以下のコマンド一つでReactの開発環境が即座に構築されます:

npx create-react-app my-app

生成されるディレクトリ構成は以下のように整理されています:

my-app/
├── node_modules/
├── public/
│   └── index.html
├── src/
│   ├── App.js
│   └── index.js
├── package.json
└── README.md

この構成では、Webpack、Babel、ESLintなどの設定はすべて裏で管理されており、開発者はコード実装に専念できます。ただし、プロジェクトが拡張されるにつれ、独自の構成や最適化を加えたくなるケースも出てきます。その場合は、npm run ejectを実行して内部設定を展開する必要があります:

npm run eject

ただし、このコマンドは元に戻せず、以降はすべての構成ファイルを手動で管理しなければならなくなるため、慎重な判断が求められます。

2.2 Next.jsの柔軟なプロジェクト構成

Next.jsは初期構成がシンプルでありながらも、柔軟性に富んだ設計が特徴です。create-next-appコマンドにより、すぐに本格的なフルスタックアプリケーションの基盤が出来上がります:

npx create-next-app my-app

プロジェクト構成は以下のようになっています:

my-app/
├── pages/
│   ├── index.js
│   └── api/
│       └── hello.js
├── public/
├── styles/
├── next.config.js
└── package.json

pages/ディレクトリはルーティングと密接に関連しており、ファイルを追加するだけで自動的にルートが生成されます(ファイルベースルーティング)。さらに、next.config.jsを用いることでWebpackやBabelのカスタマイズも柔軟に対応できます。

// next.config.js
module.exports = {
  reactStrictMode: true,
  images: {
    domains: ['example.com'],
  },
  webpack: (config, { isServer }) => {
    // Webpack設定の拡張
    return config;
  },
}

Next.jsはTypeScriptも自動認識し、.ts.tsxファイルを追加するだけで必要な設定ファイルを自動生成します。さらに、ESLint、環境変数(.env)、カスタムドキュメント構造なども標準でサポートしています。

結論として、CRAは「素早くReactを始めたい」開発者向けに、Next.jsは「高度な構成と拡張性を求める」開発者・チーム向けに、それぞれ最適な出発点を提供しています。


3. 開発効率の違い:どちらが生産的か?

開発効率とは単にコーディングの速さだけではありません。設定の手間を減らし、メンテナンス性を高め、チーム全体の作業負担を最小限に抑えることが真の意味での「生産性向上」と言えます。この観点から、Create React App(CRA)Next.jsを比較していきましょう。

3.1 ルーティング方式の違い

CRAにはルーティング機能が内蔵されていないため、react-router-domなどの外部ライブラリをインストールして、手動でルート定義を行う必要があります。

npm install react-router-dom
<BrowserRouter>
  <Routes>
    <Route path="/" element={} />
    <Route path="/about" element={} />
  </Routes>
</BrowserRouter>

この方法は柔軟性はありますが、設定に時間がかかり、アプリケーションが複雑になるほどルーティングの管理が煩雑になります。

一方、Next.jsはファイルベースルーティングを採用しており、pagesディレクトリにファイルを追加するだけで自動的にルートが作成されます。

pages/
├── index.js       → "/"
├── about.js       → "/about"
├── blog/
│   └── [slug].js  → "/blog/:slug"

このシンプルで直感的な構造により、ルーティングの手間を大幅に削減でき、特に中〜大規模アプリケーションでは開発スピードと保守性の両面で大きなメリットとなります。

3.2 ディレクトリ構造とコード管理

CRAは自由度が高く、srcディレクトリ内で任意の構成を取ることができます。しかし、構造がプロジェクトごとに異なりやすく、統一感を保つにはチームでのルール設定が不可欠です。

Next.jsはより意見的(オピニオネイティッド)な構造を持っており、pagesapipublicstylesなどのディレクトリに明確な役割が定められているため、自然と一貫したコードベースを維持しやすくなります。

このような構造はチーム開発において特に有効で、新メンバーのオンボーディングやコードレビューの効率化にも貢献します。

3.3 TypeScript、ESLint、Prettierの統合

CRAでTypeScriptを使用する場合は、プロジェクト作成時にテンプレートを明示する必要があります:

npx create-react-app my-app --template typescript

ESLintやPrettierなどのツールも個別に導入・設定が必要で、構成ファイルやスクリプトの管理に手間がかかります。

対してNext.jsはTypeScriptを自動認識し、.ts.tsxファイルを追加するだけで設定が自動生成されます。また、ESLintはデフォルトで統合されており、以下のコマンドで簡単に実行可能です:

npx next lint

さらに、Prettierとの連携も容易で、プラグインをインストールして.prettierrcを追加すればすぐに利用可能です。

まとめ:CRAは手動構成に自由度がありますが、Next.jsは構成の標準化とツール統合によって開発の無駄を大幅に減らし、生産性を飛躍的に向上させるフレームワークです。


4. 高度な機能比較:SSR、SSG、API統合

現代のWebアプリケーションにおいては、ただのフロントエンドだけでなく、パフォーマンス最適化、SEO対応、サーバー機能との統合が重要な要素となります。このセクションでは、Next.jsが提供する高度な機能(SSR、SSG、API)を中心に、CRAとの違いを実践的に比較していきます。

4.1 サーバーサイドレンダリング(SSR)

Next.jsはSSR(Server Side Rendering)を標準でサポートしています。ページリクエストごとにサーバー上でHTMLを生成して返すことで、初期表示速度の向上やSEOの強化につながります。

以下はSSRを実装する際の例です:

export async function getServerSideProps(context) {
  const res = await fetch('https://api.example.com/data');
  const data = await res.json();

  return {
    props: { data },
  };
}

このように、データ取得をサーバー側で行い、その結果をページコンポーネントに渡して描画できます。動的なユーザーデータや管理ダッシュボード、CMS連携など、リアルタイム性の高いコンテンツに向いています。

CRAはCSR(クライアントサイドレンダリング)のみ対応しており、SSRを実現するにはNode.jsサーバーなどを自前で用意する必要があります。これは複雑さを増す要因になります。

4.2 静的サイト生成(SSG)

Next.jsではSSG(Static Site Generation)も可能で、ビルド時にHTMLを生成して高速配信するアプローチを採用できます。SEO対策やアクセス負荷分散に効果的です。

下記はgetStaticPropsを使用したSSGの例です:

export async function getStaticProps() {
  const res = await fetch('https://api.example.com/posts');
  const data = await res.json();

  return {
    props: { data },
    revalidate: 60 // ISR(Incremental Static Regeneration)
  };
}

このコードでは、ページがビルド時に静的に生成され、その後60秒ごとに再生成されるインクリメンタル静的再生成(ISR)を活用しています。これにより、静的コンテンツの高速性と動的コンテンツの柔軟性を両立できます。

CRAではこのようなSSG機能は標準で備わっておらず、Gatsbyなどの別ツールと組み合わせる必要があります。

4.3 APIルートによるバックエンド機能

Next.jsにはAPIルート機能が組み込まれており、フロントエンドとバックエンドを同一プロジェクト内で管理できます。pages/apiディレクトリにエンドポイントを作成すれば、サーバーレス関数としてHTTPリクエストを処理できます。

// pages/api/hello.js
export default function handler(req, res) {
  res.status(200).json({ message: 'こんにちは、Next.js API!' });
}

このようなAPIは、認証、データ保存、Webhook受信などに活用でき、Vercelなどのホスティング環境では即座にサーバーレスとしてデプロイ可能です。

一方CRAでは、バックエンド処理を行うためには別途ExpressやNestJSなどのサーバーを構築し、CORS設定なども手動で管理しなければなりません。

まとめ:

  • Next.jsはSSR、SSG、ISR、API統合をネイティブにサポートし、柔軟かつ拡張性のあるフルスタックアーキテクチャを提供します。
  • CRAはクライアントサイド中心の構成であり、高度な機能を実装するには追加設定や別環境の準備が必要です。

本格的なWebサービスやSEO対応が必須のコンテンツサイトを構築する場合、Next.jsは最も信頼できる選択肢となるでしょう。


5. プロジェクト別の最適な選択とは?

ここまで、Next.jsとCRAの技術的な違いや機能面の比較を見てきました。しかし、実際の現場では「どちらが優れているか」ではなく、「どのプロジェクトにどちらが適しているか」が重要です。このセクションでは、ユースケース別にどちらを選ぶべきかを整理していきます。

5.1 CRAが適しているケース

CRAは以下のようなケースに適しています:

  • 社内向けのシンプルなSPA(シングルページアプリケーション)を素早く構築したいとき
  • SEOやSSRが不要なアプリケーション(例:社内ツール、ダッシュボード)
  • Reactの学習やプロトタイピングを行うとき
  • プロジェクトの規模が小さく、開発スピードを重視したいとき
  • 構成をシンプルに保ちたい個人開発や少人数チーム

例:管理画面、データ入力ツール、単機能の社内アプリなど

5.2 Next.jsが真価を発揮する場面

Next.jsは以下のような場面で威力を発揮します:

  • SEO対策が重要なWebサイト(例:ブログ、LP、コーポレートサイト)
  • 表示速度やCore Web Vitalsに配慮したいとき
  • フロントとAPIを一体化して開発したいとき
  • 将来的に拡張が見込まれる中〜大規模アプリケーション
  • SSGやISRなどを活用して、高速かつ安定した配信を行いたいとき

例:メディアサイト、ECサイト、グローバル向け多言語対応サイトなど

5.3 チーム規模と技術成熟度による選定ガイド

選定基準 CRA Next.js
初期導入のしやすさ 非常に簡単 やや学習コストあり
ルーティング構成 自分で設定(自由) ファイルベースで自動
拡張性と柔軟性 限定的 高い(SSR、APIなど)
チーム規模 1〜3名 3名以上
将来のスケーラビリティ 低め 非常に高い

まとめ: 技術的な優劣ではなく、プロジェクトの目的、期間、チームの経験値、将来の展望に応じて最適な選択をすることが何より重要です。CRAとNext.jsは、開発の目的に応じて使い分けるべき「共存可能な選択肢」です。


結論:React開発、最初の一歩をどこで踏み出すか

Create React App(CRA)Next.jsは、どちらもReactでのアプリケーション開発を始めるための優れた選択肢です。しかし、それぞれが向いている用途やプロジェクトの性格は大きく異なります。

CRAは、学習・試作・小規模なUI中心の開発において非常に手軽かつスピーディーなスタートを可能にします。一方、Next.jsは実運用・パフォーマンス・SEO・拡張性を重視するアプリケーションにおいて、本領を発揮します。

選択は単なる技術的な好みではなく、あなたのプロジェクトが何を求めているかに基づくべきです。構築するアプリケーションの性質、運用フェーズ、チームの体制、今後の拡張計画を見据えて、最適なフレームワークを選びましょう。

Reactという旅は、ツールの選定から始まります。 そしてその選択は、アプリケーションの未来を左右する大きな一歩なのです。

댓글 남기기

Table of Contents